作物にとり良い土の状態とは

ミネラルの特徴と効果

  • 生物はどのような形をしていても栄養分を吸収して生きています。人間や植物も同様で必ず必要な栄養素があります。ほとんどの栄養素は合成が可能ですができないモノがあります。それがミネラルです。農業用語では微量要素と言われていますが、普通は害のある重金属もミネラルで吸収できるサイズとイオン化が問題です。
  • ビタミンやアミノ酸、糖類、炭水化物等生きて行く上で必要なものがありますが、ミネラルだけは他と異なります。それは圃場(農地)に沢山施肥した石灰がカルシウムイオンになるのには長い時間が掛かるのと同様で、吸収されるサイズになって初めてミネラルと呼ばれます。
  • 植物の場合は1ミクロン以下のサイズが条件で微生物が活性した状態で自然に作られます。もっと分かり易く言い換えると植物が持っているミネラルを細胞から出すとできるので、堆肥や残渣を微生物が分解すると多くなります。逆に肥料成分だけを圃場に施肥し、作物を収穫するとどうしてもミネラル不足がおこります。
  • 生物にとってミネラルは重要な栄養素ですので、どうしてもなくなると勢いがなくなります。作物にミネラルを与えると急に生理活性するのはその作用が大きいからです。吸収しやすいミネラルの豊富な土は微生物が常に活性していますので病害虫に強い元気な作物を育てます。
  • ミネラルは緩衡能(かんこうのう)と言われる力を持っています。中性に戻す効果で偏ったペーハーを補正します。それは土の環境を安定させる力として働きます。  また、ミネラルと言われるサイズになると浸透性や吸収性、速効性が高まります''。ただし、ミネラルは重金属ですので使用には注意が必要です。
  • アミノ酸の効果と使用方法

  • アミノ酸は植物にとって最高の便利資材です。根から硝酸態窒素を吸収してタンパク質を合成するより直接吸収すればエネルギーを一工程節約できます。  また、光合成によって葉で造る炭水化物もアミノ酸から窒素を取り除くだけで炭水化物ができエネルギーを節約できます。
  • アミノ酸は作物の成長を助け楽に栄養成長を促し、炭水化物のゆとりを生むので組織が頑丈にでき活性が高まり、ミネラルの吸収も高まります。  また、ミネラルが豊富にあるとホルモンや酵素を多く作られ製品価値や食味等が上がります。
  • アミノ酸で土の環境を作る

  • アミノ酸は土中ではあまり多くあるとは限りません。それはアミノ酸分解する微生物がいない圃場が多いからです。アミノ酸資材を施肥しても使い切ると分解がされないので、葉面散布したアミノ酸資材も効果を出しません。 それはアミノ酸が使われる場所は根だからです。根圏にアミノ酸がないと、葉面散布で吸収したアミノ酸で根が活性しても効果になりません。
  • 微生物が活発にアミノ酸を分解している土壌で、アミノ酸資材を葉面散布すれば作物が活性し、成育が早くなったり、登熟が早まり、旨味成分を多く蓄え作物の食味アップにもなります。  ただしアミノ酸は悪い菌にも効果を出します。土壌に良い菌を増やすことは全てにおいて重要です。
  • 有機肥料のアミノ酸

  • 有機肥料に含まれる窒素化合物の大半は蛋白質です。蛋白質は約20種類のアミノ酸で構成される化合物です。有機肥料の種類によって含まれるアミノ酸は異なっています。さらに、有機肥料を土壌に施用すると、相当量の遊離のアミノ酸が生成されることも確かめられています。
  • トマトの事例では、微量のアミノ酸を添加によって生育が促進された。
  • 裸麦の事例では、アミノ酸を唯一の窒素源として増収した。
  • これら以外にも、プロリンなどのアミノ酸を追肥すると着果促進''などの効果も報告されています。
  • 水稲や果菜では、栄養生長から生殖生長への転換期にプロリンが増加するなど、生育時期や季節によってアミノ酸組成が変化することが知られています。
  • 土作り(微生物の必要性)

  • 土は現在偏った肥料の施肥によってバランスが良くありません。有機質資材を使用しているからと言ってもリン酸や石灰が自然と多くなってしまい、過剰な肥料分で調整が旨く行っていない場合が多い状況です。
  • 生きている土は微生物が豊富にあって、酸素や水を良く通しペーハー(pH5~6)も安定しています。微生物が多いと土は活きていますから、有機質資材を良く分解して、作物が根から吸収しやすい養分や栄養を作り出します。
  • リン酸やカリが多くなると塩基化しやすく、分解するにはペーハーが5から6でないとしません。根から出る根酸も植物の生理活性や剪定等から出ますのでメカニズムを理解しないと旨く行きません。
  • 乳酸菌

  • 糖をエサに乳酸などの有機酸を多く作り出すのが特徴。条件的嫌気性菌で、嫌気的な条件で乳酸を作るが、酸素があっても平気。桿菌と球菌があり、桿菌にはヨーグルトや乳酸菌飲料をつくるラクトバチルス、球菌にはチーズやヨーグルトをつくるストレプトコツカスなどがいる。
  • ボカシ肥・発酵肥料づくりでは、こうじ菌や納豆菌がつくった糖をエサに増殖、乳酸は強酸性なのでボカシ肥のpHが下がり、酸性を好む酵母菌が増殖しやすくなる。
  • 米ヌカを葉面に散布して病害虫を防除米ヌカ防除している生産者は、米ヌカで乳酸菌が繁殖し、つくられた乳酸で葉面のpHが4.5以下の酸性に変わり、病原菌は殆んど活動できなくなると言う。また、乳酸菌がつくる有機酸は土のミネラルを溶かしたり、キレート化したりして、植物に吸収しやすくする。
  • 乳酸菌をメインにした微生物資材も市販されている。 ※マーモ30の中には微生物ではpH4~5の乳酸菌や酵母菌等とミネラルが入った微量要素にアミノ酸は30種類も含まれている。。
  • 酵母菌

  • 自然界では熟した果実(特にブドウ)の表面などに多く、糖をエサに様々なものを合成する力が強い。糸状菌(カビ)の仲間だけが、カビ特有の長い菌糸はつく らず、カビの胞子が独立したような丸い形で、カビと細菌の中間的な性質をもつ。酸素があってもなくても生活でき、酸素のない状態では糖からアルコールをつ くり、酸素があると糖を分解して各種のアミノ酸、有機酸を合成する。
  • ボカシ肥・発酵肥料づくりでは仕上げに働く菌で、こうじ菌や納豆菌が有機物を分解してつくった糖などをエサに、アミノ酸、ホルモン、ビタミンなどつくる。良質の発酵肥料は全体が酵母菌の固まり、田畑に入ると土の微生物が一斉に活性化し、土が肥沃になる。化学肥料をも分解し、酵母菌の活躍で良質の化学肥料ボカシができる。
  • また、酵母菌が出す酵素は殺菌力が強く、酵母菌資材を活用した種モミ処理も注目されている。
  • 根圏微生物

  • 根の周り(根圏)に生息する微生物のこと。根圏では、根酸その種からの分泌物などをエサに微生物が繁殖し、その微生物が土の養分を作物が吸収しやすい形態に変えたり、微生物が分泌する養分を作物が受け取るなど、作物と微生物が共生する活性の高い場となっている。
  • チッソ固定菌、リン溶解菌、糸状菌、細菌、菌根菌など多様な微生物がおり、(1)養分吸収、(2)根の形態、(3)生理活性物質生産、に対する働きを通して、直接植物の生育に影響を及ぼしている。  見逃せないのが、(4)根圏微生物が根圏環境を保護し病原菌の植物根への感染の防除に役立っているという点である。根まわり堆肥は、良質の微生物が豊富に存在する堆肥で根を守り、病害虫にかかりにくい環境をつくっていることになる。落ち葉の踏込み床なども最高である。
  • 葉面微生物

  • 葉の表面に生息する微生物のことで、糸状菌(カビ)、酵母、細菌などが多い。米ヌカを葉の表面や通路に散布したら病害が激減したという報告から、葉面微生物に注目が集まっている。一見何もなさそうに見える葉っぱの表面だが、葉から分泌される糖類や有機酸、古くなった細胞がはがれたものなど付着しており、葉面微生物はこれらを分解して葉面をきれいに保ったり、病原菌から植物を守ったりしている。
  • その仕組みだが、(1)葉面微生物が抗菌物質を出す、(2)病原菌に寄生して病気にする、(3)栄養分を病原菌と奪い合う、(4)作物を刺激して抵抗を誘導する、(5)植物が出す他感物質によるアレロパシー。
  • 米ヌカの散布は、葉面微生物のエサを補給していると同時に、繁殖した菌が胞子を飛ばすため、さらに葉面微生物を豊かにする役割を果たす。
  • この胞子だが、人間が歩くとか、動くものがあると飛ぶ。畑によく足を運ぶと、結果的に菌もよく飛散すると言うからおもしろい。
  • 微量要素

  • 植物の必須元素といわれている二三元素のうち、微量要素と言われているのは、モリブデン、銅、亜鉛、マンガン、鉄、ホウ素、塩素の七元素。これらの微量要素は、微量ではあるが、体内で光合成や硝酸還元などの代謝に重要な役割を果たしているため、不足するチッソ代謝を狂わせて、チッソ過多の農産物の原因になり、病気に弱い、体質をつくったり味を悪くしたり、日持ちを悪くしたりすると言われている。
  • 収穫に含まれたこれらの微量要素は食事を通じて人間にも影響する。最新「五訂日本食品標準成分表」で新たに加わった亜鉛の場合、不足すると生殖機能不全、精子の減少、前立線肥大、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病、さらには味覚障害などの症状があらわれると言う。
  • 微量要素はもともと土にあり、堆肥などから供給されるからあえて施用する必要はないという考えがある一方、土壌分析にもとづいて積極的に施用するやり方もある。微量要素は過剰害も出やすく注意が必要。  また、その吸収はpHの影響を受け、特にアルカリ化すると鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛などが効きにくくなる。米ヌカなどを活用した土ごと発酵は、土や有機物の微量要素を引き出す方法ともいえる。
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